大阪高等裁判所 昭和25年(ネ)59号 判決 1950年11月04日
主文
本件控訴はこれを棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は原判決を取り消し、本件を大阪地方裁判所に差し戻す旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、本件買収令書の交付は定足数をかく大阪府農地委員会の議決によつてなされた承認にもとずいてなされ、而も右承認については承認書も作成せられていないので、右承認はいずれの点からいうも無効で、適法な承認なくして為された本件買収令書の交付も亦無効であつて、かかる無効な買収令書交付の日から出訴期間を起算すべきではないから、本訴については出訴期間の徒過というが如きことはありえないと述べ、被控訴代理人において控訴人の右主張事実を否認すると述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
(立証省略)
理由
先ず本訴の適否について考えて見るのに、自作農創設特別措置法第一四条による買収農地の対価増額の訴は買収令書交付の日から一ケ月内に提起すべきものであつて、成立に争のない乙第一号証、原本の存在及びその成立に争のない乙第二号証に原審証人梅村政治の証言を総合すると、本件買収令書が昭和二二年一二月二四日控訴人に交付せられたことを認めることができる。控訴本人の供述中右認定に反する部分はたやすく信用できず、他に右認定を左右するに足る証拠がない。従つて控訴人の本件買収農地の対価増額を求める訴は、右買収令書交付の日である昭和二二年一二月二四日から起算し一ケ月内に提起すべきものであるのに、本件記録によると本訴の提起せられたのは昭和二三年五月六日であるから、本訴は右出訴期間経過後に提起せられた不適法のものといわなければならない。なお控訴人は本件買収令書の交付は無効であつて、無効な買収令書交付の日から出訴期間を起算すべきでなく、従つて本訴については出訴期間の徒過ということはあり得ないと主張すれども、買収農地の対価増額の訴は適法な買収令書の交付のあつたことを前提として許されるものであつて、控訴人主張の如く買収令書の交付が無効なるときは買収農地の対価の増額を請求する利益がないので、本訴は不適法なものといわなければならない。従つて本訴はいずれの点からいうも不適法であつて却下を免れないので、結局これと同旨に出でた原判決は相当であつて、本件控訴はその理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴第九五条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。(昭和二五年一一月四日大阪高等裁判所第一民事部)